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2009年9月 9日 (水)

「虚数霊」単行本新1巻は10月発売です。

拙著「虚数霊」のフラッパー誌での連載をまとめた単行本は
10月23日刊行予定で作業を進めています。
色々としたいことがあるため、
今月は連載を1回休みにしましたので
10月5日発売の月刊誌には掲載はありません。

したいことを簡単に述べれば、
連載時よりトーンワークを充実させる。
演出や画質的に劣るコマの差し替えをする。
ドラマを補完する意味でドラマを描き足す。
旧・幻冬舎版から転用する話のリファインを行う。
の4点です。
自分のワガママと言えばそうなのですが、
単行本に相応しい体裁を整えて
購入してくださる方のバリュを高めたいのです。

現在の進捗は担当との仕様の細かい確認を済ませ、
カバー画のカラーイラストを脱稿したところ。

担当編集さんからは、本屋を一緒に巡って、
今どきの書籍の傾向や気に入ったものを参考にして
カバー画の構想をまとめようという打診があり、
僕もそのつもりでいましたが、
打ち合わせの日程が諸事情で後ろへずれていったこともあって、
外出時に時間を見つけて先に一人で書店を眺ることに。
そうしたら、コミックスはどの絵もどの絵も
まぁ肌色成分の量とか、総花的な構図とか、暑苦しい読者視線とか、
誰かの権威を借りた推薦文の帯だとかばかりで、もう辟易。
外向きの力に満ちているようで、
これって「売れる」と思われるセオリーをなぞっただけの
極めて後ろ向きの保守的な行動だと思う。
出版社のフォーマットだけが左右しているのではない。
(小学館のようにフォーマットが酷い所もあるけれど)
絵自体に形骸化が著しいのです。
作家のほうも、こう言う絵が売れるんだろ、ウケるんだろ的な打算と姑息さが透ける、
浅はかな収斂をしているのが気になります。
売ってもいいから、ルーチンを壊して欲しいです。
恐ろしいのはその収斂された表現でしかものを考えられなくなること。
野心というものが、姑息というものにすり換えられた姿であり、
それすらも当事者達が気づいていないのではないかと思ってしまいます。
もちろん中には、作家性が発揮されたり、
試行錯誤を重ねた秀逸なものもあるけれど、
総じて「デザイン」が感じられない。
デザインというのは絵やその構図、レイアウトやエディトリアルだけではなくって、
作品のもつ意思というか志向を形にすること。
決してパーツを寄せ集めたパズルじゃない。
型を常勝のセオリーとして盲目的にトレスすることじゃないはずです。

「虚数霊」の旧・幻冬舎版の単行本の編集時、
先方のデザイナーの仕事に期待しようと、
僕の方はメインのビジュアルはレイヤーの活きた元データ、
それにいくつかの素材を渡しておくだけにしておきました。
しかし出来上がってきたデザイン案は不可思議なハイエンド系もどきで、
作品の内容や雰囲気とはおよそかけ離れた妙なもの。
こちらが何度かテーマ性や志向を伝えても、どうにもならない。
まるでパズルか「福笑い」の推敲結果が並ぶだけなのです。
それでデザイナーと自称する相手が
まったく作品を読んでいないで作業していることが判ってきました。
つまりデザイナーなんかじゃなかった。
その時点で、総てにダメだしをして、
大まかなカバーのデザインから帯のデザインと文書まで全部自分でやって、
細かいフィニッシュだけ工夫せよと
相手をオペレーターとしてのみ使役しました。

書店に並ぶコミックスの面構えは、あのときのデザインの欠落感を呼び覚まします。
そこで僕の方は、早々にコミックス売り場を後にして、CD店に移動をする。
以前に音楽をやっている友人のビジュアルデザインを手伝ったことがあるのですが、
CDジャケットの方が、よほどデザインというものが存在しているのを感じていたからです。
「よほど」と言うより「雲泥の差」だと思います。
音楽は漫画より厳しい競争におかれる市場であり、
音楽だけで生計をたてていける人間の数は国内に数千人しかいないと言われています。
それがルーチンに走らずデザイン性を有し続けているというのは
なぜなんだろうと思うけれど、業界も違うし良く解らない。
でもその努力と創意は尊いと感じます。

CDはサイズも小さくてコミックスのボリューム感と近いし、
実際、参考になるものが多い。
いくつか気になるエッセンスを備えたジャケットをメモに控えて、
家で適当なキーワードをもとに画像検索した中で気になった図などと合わせて
自分の作品イメージの触媒として絵を固めていきました。
それをラフにまとめて彩色を施して会議に臨んだ結果は、
実はすごく地味な構図なのだけれど、
絵における仕掛けが効果的に機能しそうとのことで、編集からOKをいただけました。
帯も推薦文などなく、コピー一本。
あとはMF社のデザイナーのまとめかたに期待してみたいと思っています。
僕は本当は支配的に仕事を進めるのは嫌い。
組んだ相手と切磋しながら創意と工夫を重ねて、
一人でやる仕事以上のものを生み出したいといつも思っています。
ここまでフラッパーでは良好に仕事ができているし、
単行本も好ましい仕上がりになることを願っています。

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