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2010年4月 3日 (土)

消えゆくもの

4月になった。
マンションの庭は桜が満開であでやかだ。
TVやラジオの番組は改編期で、
どれが楽しみとかプログラムを追いかけたりするわけではないけれど、
いままでと装いが変わったことには気がつく。
今ではTVは食事の時間位しか観ないけれど、
ますます安っぽくなったように思う。
予算がないから安く作っているというより、
表現が安っぽい。
というか人間が薄っぺらになっていく感じがもう気持ち悪い。
そうたいしたことでもない話題を
どうして大仰なそぶりと甲高い声で喚き散らさなければいけないのか。
彼らは一応「芸人」と呼ばれる職種に属するから
その大げさな騒ぎかたにも「芸」や「工夫」があるのだろうけれど、
僕にはチンドン屋以下、街角の高校生の大騒ぎと大差がないようにしか感じられない。
僕の知る落語や、古い漫才は別にああして騒ぎ立てるばかりじゃなかった。
語気の緩急もあったし、
何より、静かに語っても惹き付ける力や説得力があった。
でも今のTVは、ニュース番組まで
ニュースとは思えないような口調と
ニュースを語るべきではない人が
雁首を揃えて、皆同じような調子でまくし立てている。
まるで養鶏場に行ったみたいだ。
NHKでもタレントを使う番組もあるが、
ここでもタレントはまた同じようにニワトリがごとき奇声を発する。
なんだこのパターン化は。
日本のTVや映画はどうも無理やり笑わせたり、泣かせたりを強いている。
そうして感情を強引にガス抜きしないとならないほど
ストレスが高いのだろうか。鬱屈しているのだろうか。
日本人は静かに暮らす時間の価値を見失ってしまったのかな。
内省的に心を律する術を忘れてしまったのかな。
身の周りの音に耳を傾けたり、
本の頁の中に気持ちを滑り込ませたり、
手作業をしながら鼻歌を唄ったり、
どこかの花の匂いを楽しんだり、
日なたで寝返りをうつ猫を愛でたり、
コーヒーを挽くところから煎れ始めたり、
いくらでも気持ちを穏やかにすることはできるだろうに。
誰かに無理やり笑わされるなんてうんざりだ。
少し前に媒体の信頼度を測ったアンケートがあって、
1位はNHK-TVのニュース、2位が新聞だったかな。
民放の信頼度は惨めなもので、
こんな番組を流し続けるTVは、きっともっと駄目になっていくだろう。
NHKだけじゃ駄目だから
なんとか違う眼差しで番組を作って欲しいな。

FMも模様替えがそれなりにあった。
いつも聴いていた番組も無くなったり、担当者が替わったりした。
ラジオはメディアとしての老後というか
大きな波のない視聴者数を相手に独特の近接感をもって、
焦りを感じさせないながらも、
積極的で意欲的な改編だなという印象で受け止めている。
その昔、NHK-FMがクラシック番組の聴取者反応が薄いからと
大幅に番組数を減らし、歌謡番組などに時間を振り分けたとき、
驚くほどの数の抗議が局に届いたことがあった。
慌てたNHKは次の改変期で時間を復活せざるを得なくなり、、
静かなる視聴者の存在を思い知ったのだ。
ラジオはその意味では成熟した環境にあるのだと思う。
インターネットラジオやポッドキャストなど
その環境にも変化の兆しはあるけれど、
視聴者そのものは大きな変化を好まず、
緩やかに移り変わっていくものだと感じている。
それでも、今回の改編で僕が一番残念だったのは、
J-WAVE、土曜深夜0時からの「THE VOYAGE」が終わったことだ。
音楽もかかる番組なのだけれど、企画の主体は
世界各地から旅をして録ってきた「生音」だったのだ。
所謂「ナマ録」番組。
これ以外はNHKの「音の風景」くらいしかない、貴重な自然音の時間だった。
高音質・ステレオ放送というFMならでは、昔ながらの特徴を有す番組だ。
音場空間はTVなどの限られた不自由なフレームなどなしに
その空間を再現できる優越性を有している。
僕らは目を閉じて聴くだけで、その場に存在できるうるのだ。
コベントガーデンの雑踏や、バラナシの沐浴、アラスカに降る雪の音まで、
僕らは体感することができる。
無駄な音、雑音、ノイズとして普段見向きもされず、
iPodのイヤホンで蓋をされるその音たちに
実は意味や個性、そして美しさがあるのを知らせてくれる。
その番組がなくなってしまった。
残されたwebでその名残を受け取ることはできるけれど、
いつか、しかもそう遠くない未来に
その貴重な音たちの主張は消され、消えてしまう。
音は放たれれば、消えていく時間の落し物だと思うけれど、
それでも聴きたいから、遺したいから、人は録音の技術を獲得したのだ。
でもそれすら消され、存在を忘れられる。
仕方がないのかもしれないけれど、淋しいという気持ちだけは心に刻もう。
http://www.j-wave.co.jp/original/thevoyage/

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