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2011年2月 1日 (火)

さぁ次の峰へ

コミックフラッパー誌で連載していた「虚数霊」の最終回をようやっと脱稿した。
お話の内容は最終回なのかっていうと、最終回ではなく、
じゃあ週刊漫画誌の10週漫画のノリなのかというと、そうでもない。
半年かけて計画していた幕の引き方。
そもそもイメージしていた本当の最終回の結びとは展開上その手前ゆえ異なるけれど、
一旦畳もうという編集との判断から自分に与えられた時間の中で、
全ての伏線や説明をかっちりきっちりと描ききるでなく、
必要なものにだけ方向を与えて、
絵として、お話として見えてきたものを描けたように思う。
そして「予感」をもったものにできたはず。

昨年末から1月半ばまで、
2月下旬発売予定の「ストライクウィッチーズ公式コミックアラカルト2」の
短編漫画にかかっていたこともあったけれど、
この最終回はなかなか自分には難産だった。
ここまで来た過程から、語るべきものは見えているのだけれど、
物語としての動性に欠けすぎていて、
この沈静した空間に
お話として面白さとか緊張感とかそうしたものを付加できるか、
限られた時間と頁数と自分の能力を考えると、
どうにも気持ちが尻込みしてしまって、悩んでしまった。
物語を取り繕おうと、
伏線の回収に語りすぎればくどいし、
会話としてのニュアンスが失われる。
でも単調で通り一遍等な筋道ではひねりがない。
三島由紀夫の「美しい星」のような、
転生した太陽系の星々の子と白鳥座X-1ブラックホール星人との
人類の命運を賭けたラストバトルが自分にはどうしても頭の中にあるので、
(なんか誇張されてるな)
内省的な仕掛けをもって、お話や人物に緊張感を出せないかと腐心を続けた。
それでも漸減する時間に追いつめられて、
「今月はもう描けない、間に合わないかもしれない」と
担当編集に泣きつきもした。
それを「大丈夫、待ちます」と勇気づけて背中を押し、
劇中のサトルの台詞を読んで、この作品への自分の気持ちと同じだと
励ましてくれた担当氏には本当に感謝している。
そうしてプロットに着手してから2週間、24pの原稿は仕上がった。

トーンの最後の仕上げは野上武志さんのスタジオとスタッフさんをお借りした。
彼も体調が優れない中での〆切前で忙しい盛りであったのに、
自分の仕事のタイミングを鑑みて、受け入れを工面してくれたのには頭が下がる。
思い返せばMF社での「虚数霊」の連載の最初も、ここで仕上げを手伝ってもらった。
その同じこの場所で、幕引きが出来たのは、
自分の中では感慨深い。
僕はここで専業漫画家として立つために必要なものの多くを学んだし、
酒席で「野上組からデビューしました」という自己紹介も
自分の中ではジョークではなかったりする。

皆んな どうもありがとうございました。

で、お蔭様で予定の時刻より早く入稿ができたので、
野上さんの原稿をそのまま手伝ったりする。
中途半端な時間しかなく、あまり役に立てなかったけれど、
晩ご飯を作ることはできた。
今月は何度かスタジオに入ってサポートする予定。
ささやかだけど恩返しのひとつ。

「虚数霊」自体は3月の単行本発売が計画に入っているので、
修正や描き足し、カバー画などまだ作業は続くけれど、
それは山の頂からの下り道みたいなもの。
さぁ次はどこの峰を目指そうか。

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