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2012年12月28日 (金)

楔を打ち込め!!!

以前から「宇宙戦艦ヤマト2199」の単行本2巻のカバー画は
「ゆきかぜ」にしたいと思っていた。
ヤマトという作品の中で、艦船は単なるメカや風景ではなく
家族のごとき仲間のいる場であり、なによりそれ自体がキャラだと思う中で、
単行本の表紙を飾る絵は人物ではなく艦影でありたかった。
コミックス売り場を眺める時、人物のないメカだけ、それも艦船という本はまずない。
そうした特殊な例を出版社に認めてもらえたのは
掲載誌が「ガンダムエース」誌と同じ編集部であり、
メカが表看板を飾ることに違和感を持たない気風があったからだと思う。
それには素直に感謝している。
そうして1巻は主役たる「ヤマト」を玉盛さんにお願いし描いてもらうことになった。
YamatoMechanicsというwebsightでヤマトのメカを描いた作品を発表されていた頃から、
僕はそのリアリティよりも構図やプロポーションといった見せ方の着眼が大好きで、
こちらの寄稿の願いを忙しい中で聞き届けてくれ、
実現することになったとき、どれほど嬉しかったことか。
そして2巻。
この巻に収められたお話で大切なのは「ゆきかぜ」の存在になるのは明らかであるし、
当然、自分はその駆逐艦の絵でカバーを飾るつもりでいた。
ところがそれを編集部は早いうちから拒絶してきた。
「売るため」「知ってもらうため」今度もヤマトの絵にして欲しいと
何度も何度も説得された。
売るためには「ゆきかぜ」は駄目だと。
作品性とか描き手の想いとかそういうこととは関係ない話が続く。
出版とは、作家性というか作品性というか、そういう内的なものを形にしていく商売ではないのか。
そういう意識の違いに葛藤というか随分思い悩まされた。
他の漫画家であれば、著名な作家ならば通ることでも
僕の発想や作品では力不足、役不足ゆえにまかり通らない。
そういう僕が僕であるがための現実を証明するものでもある。
これが自分のオリジナル作品であれば、相手と険悪なものになったと思う。
けれど、この作品は自分の作品というより、看板を背負わせてもらっているものだ。
そして熱意と愛情をもって作品を作り続けているアニメのスタッフを
漫画を通じて応援するのだという、自分としての気持ちがある。
角川自身も「売る」ことはつまりは想いを届けることと、
この連載をちゃんと続ける素地を作りたいということを考えてのもの。
それらが分かりながら、その板ばさみと交渉の停滞の中で、
妥協案を示したのは僕だった。
カバー画は「ヤマト」の絵でいく。
だけど「ゆきかぜ」の絵を用いたカバーの別バージョンを付録や特典で模索できないか。
積極的に検討するという言葉を得て、カバーは動き出す。
玉盛さんに2種類の絵を発注し、
実現を図るべく掲載のNA誌または角川グループの他の雑誌での付録、書店特典、
色々な形で動いた。
担当編集曰く「こんなに難しい事情になっているとは思わなかった」
そう漏らすほど、種々の理由で社内での実現は難しいものになっているらしく、
後日、断念しようというニュアンスが伝わってくる。
そこでもう一度僕が案を出す。
ファンクラブ会報誌への寄稿を通じてヤマトの権利を持つエナジオにチャンネルがあるから、
そこに相談すれば何かできるのではないか?
幸いにもこの話をエナジオは歓迎してくれる。
角川の担当を紹介し二社が組んで積極的に実現に動き始めてくれた。
第4章公開時期に合うので、劇場限定での物販はできないかなど色々な方法が考えられる。
しかし公正取引の観点や、単価が低いものゆえの収益性から価格設計が難しく、
やはり頓挫しそうだと連絡がきて、角川がほぼ手を離さざるをえなくなる。
僕は「では、かかる経費の主なものを僕が負担し無償提供します」と伝えた。
僕は損をしても構わない。でも相手に損はさせない。
そして願いを叶えたい。だってヤマトなんだもの。そう思っていた。
その申し出にエナジオ側がとても驚き、
「そんなに強い想いであれば」と協調と協力を約束してくれ、
僕の負担を極力小さく抑えながら、ついにこの年末になってやっと実現することになった。
それがファンクラブ・ヤマトクルーにおいての
玉盛さん描き下ろし「ゆきかぜ」カバーの特典つき2巻の限定販売だ。
http://yamatocrew.jp/shop/html/products/detail.php?product_id=167

Yamato2b
この企画にはさらに特典が一つ。
SuicaやPasmoなどの交通機関用ICカードに貼って使えるラミネートシールがある。
これは玉盛さんが1巻に描いてくださったイラストを使用。

Yamato2a
単行本ではトリミングしていたけれど、
実際は全体の艦容が描かれていたのだ。
味気ないSuica定期券とかにこれを密かに貼って、通勤とかできたら
僕だったら凄く楽しいし嬉しい。
商品の魅力と利益率を整えるためにもう1品と相談されて
これも僕が提案した。

コミックスの本来の「ヤマト」のカバーも当然ついている品物なので、
二重買いの心配もないし、
有料特典ながら低廉に抑える努力をしたものなので、
手にとって気持ちを感じてもらえたらとても嬉しい。
読んでいただければ、どうして「ゆきかぜ」なのか、きっと理解して貰えると思う。

こうしたことを連載と並行し、
今月は休載であってもイラストの仕事やアニメ本編の設定などをしながら
動いていたので、かなりハードだった。
そしてそれを支えてくれたのは、印刷の現場の人でもあった。
今回の一連の印刷は単行本の凸版印刷を使っていない。
納期や品質、小ロットに強いというところを汲んで、
同人誌印刷では名の通った緑陽社さんにお願いした。
僕もかつては編集者だったので、印刷の仕上がりを吟味することはできる。
緑陽社はその品質は確かであるし、
なにより営業部の見識と製版・印刷工程との連携が素晴らしい。
それがどれだけ顧客に安心と信頼を与えることか。
この現場が柔軟かつ丁寧にケアを重ねてくれたおかげで
この別カバーは実現できたのだとも言える。
本当に感謝している。
もちろん好意的な立場であってくれた製作委員会さんにも恩を感じる。
角川も今回を機会に初めてエナジオとのチャンネルができて、
連携をしやすくなったと喜んでくれている。
古い意識、固まった議論、からまった構造、
そこに上手く楔を打ち込むことができれば
視界が開け、新しく美しい姿が見えてくる。
人はそれを諦めてはいけない。

と、いうことで「宇宙戦艦ヤマト2199」第2巻は無事に刷り上り、
今、僕の手元にある。
やはり1月12日の公開合わせでの発売になるとのことだけれど、
もうすぐだ。
http://yamato2199.net/goods/relation04.html#comic02
角川の営業から書店用にサイン色紙をとお願いされた。
びっくりしたのはその営業部の担当者は大学のサークルの後輩だった。
彼も僕が昔からヤマトが好きなのを知っている一人で
この連載を喜んでくれていた。
ヤマトのTV特番のディレクターもサークルの同期だ。
そういう不思議な縁のような気持ちが集まってこの作品は動いている。

サイン色紙はコミックZINさんや丸善さんにも行くらしい。
年末に描いてしまおう。
この書店の特典用に描いた絵を公開しておこう。
コミックZINさんは新見さん。

Yamato2d
丸善・御茶ノ水店は森雪と山本玲の二大ヒロイン。

Yamato2c
ポストカード用にデザインを施しトリミングしサイズを作り変えたので、 このままではないことにご注意を。

そして明日からのコミケット83。
繰り返すようだけれど、
僕は3日目、31日月曜の西「ほ-14a」。
新刊は連載のヤマトのネームを2巻分全部納めた本。
http://murakawamichio.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-b42f.html
ウチはサークル参加歴は長いのだけど、
マイナーであまりお客さんも訪ねてこないから、
今回は刷り部数をいつもより少なめにしておいた。
それが分相応というものだ。
あと、明日初日、29日には寄稿したサークルさんが出展。
そこで表紙画とそのデザインフィニッシュ、中のイラストを一枚描いている。
サークルはいつもの「日本晴」で「東ピ-30b」だそうな。 
宇宙戦艦ヤマト2199 の二次創作本。

Yamato2e
執筆者は
北崎拓
むらかわみちお
環望
あさりよしとお
EXCEL
多田克己
野上武志
日向直子
春風紅茶
月島ひるこ
yosizo
(敬称略・井上純弌は原稿落ちました)
とのこと。
もし初日に出られる方は覗いて見てください。

追記:12/29 3:50a.m
ヤマトクルーの会員限定のショップですが
有料会員ではなく、登録のみの無料会員でも購入できるはずですので、
試してみてください。
送料はかかりますが、4章のグッズも出るので他の品と合わせたりしての購入や、
交通費など考えると割安になる発想もできるかなとか思います。

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