まだまだですが
先日は久々に国分寺のXEBECへ。
12月は連載にお休みをいただいたので、制作あわただしいアニメのお手伝いができればと、
設定の会合に参加した。
演出担当の羽原信義さんを交えて打ち合わせ。
必要なイメージにそれぞれの考えや知恵を持ち寄って、
きびきびと議論が重ねられて決まっていく様は本当に気持ちが良い。
決められた内容が現場に届く際の配慮もきちっと言及される。
僕はアニメの仕事は初めてだけれど、
社会人や社長として長く色々な会議を見てきた手前、
ここがとても良い現場だって分かる。
会議のちょっとした待ち時間に
玉盛さんのほやほやの新設定を眺めたいたら、
監督から「そこへ立って」と声がかかった。
制作さんと二人で並んだら、監督が定規でその距離を測り始める。
実際に整列した人の間隔とアニメ画面の人物の列のバランスを見ていたのだ。
それでイメージを整える指示が出されていく。
瑣末な事のようだけれど、こうした感覚の積み重ねが絵に安定や美しさを与える基本にある。
不在だった小林誠さんの席を覗いたら、またもの凄い絵が並んでいた。
ファンとしてはもうワクワクなのだけれど、
これを漫画で描くと思うともう、涙がちょちょぎれそうな細かさ。トホホ。
監督と少しお話する時間も持てて、
その中で、ゆうきまさみさんのスタッフがヤマトのコミカライズをとても
褒めてくださってたと教えていただいた。
コミックス2巻の脱稿をしたばかりで、実は少し自信というか元気をなくしていたので、
とても力づけられた。
そんな時間をスタジオで過ごせてよかったと思う。
漫画家は自分の能力や才能の限界と現実へギリギリに向き合う。
真摯に臨めば臨むほどそれは精神的に厳しい。
僕のように絵を一人で描いていれば、それは孤独と共に尚更に感じる。
2巻を締めくくるお話は、
1巻、物語の冒頭から組んでいた大きな構成と情緒的な部分の山になるもの。
その意味では2巻は1巻より読了感があると思えるものにしたつもり。
その自負はありながら、
執筆においての時間的な問題、自分の絵の技術、コマ割を含めた演出、
それらがまだもっと良いものができたはずと、この数日、
後悔というか焦燥というか、自分のふがいなさを感じてしまっていた。
描いている最中にも、もっと相応しい表情があるのでは、
もっと難しい絵に挑戦せねばならないと、
自分に厳しくやってきてはいたけれど、
出来上がりを眺めるに、己の非力を見てしまう。
まだまだ精進が足りない。
もっと自分を戒め、心の退路を断ち、厳しくやっていこうと思う。
自分をもっと嫌って、赦さず、苦しみぬいて、そこから少しでも前へ進む努力をしなければ。
そしてヤマトの好きな人に親しんでもらえるものを目指したい。
僕は自分を否定し、心底嫌うことで、そこから少しでも人並みになろうという力にしてる。
友人達に相応しい自分になりたいと努力をしてる。
自分を好きでいたい。信じたいって思う気持ちで動く人もいるだろうなと思うけれど、
僕には甘やかしになってしまう。
例えば僕は絵が下手だけど、
漫画は演出やネームや脚本など他の部分でも評価されるものだからと
不得手なものにマスクをして、自己弁護するイイトコ探しなんてするのは最低だと思ってる。
漫画家はどれも逃げちゃいけない。
絵だろうと演出だろうと、全部、血反吐はくまでガチガチに向き合っていくものだ。
僕の言葉はキツク見えるけれど、
穏やかそうにある他の漫画家さんも実はそこを感じているはず。
多分それは「生業」だからなんだろうなと思う。
昔、高齢の画家のインタビューなどTVで見ると、
「自分はまだ下手で、勉強が足りない」という趣旨の発言をされることをしばしば聴いた。
わざとらしい謙遜だなぁと思っていた時期もあったが
実際、絵を仕事にしてみると、本当にそう思う。
描くたびに己の未熟を思い知る。課題を意識する。悔しさに悶絶する。
ゴールはないのかもしれないけれど、このマラソンを続けていくしかないのだろう。
2巻が出る前なのに、
なんだかダメダメばかり言うのもよろしくないとは思うけれど、
それでも精一杯のものを形にしたので、
楽しんでもらえるところがあることを願っている。
角川書店の公式webでは2巻の発売が明記された。
http://www.kadokawa.co.jp/comic/bk_detail.php?pcd=321208000207
今回の玉盛さんのカバー画も素晴らしいので、そこは手放しにお楽しみに。
2巻の口絵4Pは、連載時にモノクロだったものを改めて彩色した。
時間が思うようにとれなかったので、友人の日野カツヒコさんに
火星と百合のブーケを彩色して貰うことになった。
日野さんは野上武志さんのカラー画のお手伝いもされているし、
塗りのタッチを僕の方もある程度理解していたのでお願いできた。
で、これが雑誌掲載時の絵。
これと火星や百合の写真を参考にしてもらいながら、
試験的な意味合いもこめてあがってきた仮彩色がこれ。
火星の青みがかったグラデーションは日野さんならではの色彩感覚だし、
百合は僕のタッチに似せてくれており、素晴らしいのだけれど、
これでは火星が惑星ではなく岩塊に見えてしまうので、そういう距離感、スケール感や
火星らしい赤みを強調して欲しいと伝えて、
あがってきたのがこれ。
色はOKだけど逆にディティールが甘くなっていた。
恐らくかなり試行錯誤したのだろうなぁというのがPhotoshopのレイヤーに残っていて、
僕が彩色に用いるソフトはPhotoshopのレイヤーマスクやリンクが使えないので
利用しないで欲しいって予め伝えてあったのに
それも全部忘れてしまっていることでも、その悩みっぷりが分かった。
そこで、彼のレイヤーを僕がアレンジし、更に加筆して完成。
日野さんの色を活かしながら良い口絵に仕上がったのではと思う。
自分ではこの色が出せなかった。
ありがたい。
本編も加筆はしたし、
アシさんにあれこれ手伝って貰ってトーンや効果などほぼ全頁にわたって手を入れてあるので、
連載時と印象が変わっている頁もあろうと思う。
とにかく、少しでも前へ、少しでも良いものをと努力だけは怠らなかったつもり。
(さりとて至らないところはあるのだけれど)
これから書店特典のイラストを手がけ始める。
目下、イラストを求めてきてる書店さんは
ComicZINと丸善さんといういつも気を遣って応援いただいてるところ。
ZINさんには恐らく新見さんのイラストカードがつくことになろう思う。
丸善は思案中。
ともあれ、2月発売号の連載に向けて、スケジュールの建て直しや
アニメ本編の追加設定、
冬コミの同人誌、年賀状などなど12月は休載と言っても、
お休みにはならずにずっと仕事している予定。
まだまだ頑張らねば。
追記:
会議で同席した羽原信義さんに、
「マシンロボ・クロノスの逆襲」のレイナのシーンだけEDβで編集したビデオ作ってましたって言ってしまったよ!!
はずかしー。
更に追記:
今月号の刷り上がりを見たら、いささか誤植とか多くて弱っちゃうなぁ。
単行本で修正しておかないと。
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