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2013年2月 4日 (月)

倉皇として

ようやく脱稿して一息つけたところ。
慌しい中で一喜一憂、喜びも反省も多い一月だった。

1ヶ月のお休みをいただいて臨んだ連載の第三部、「冥王星前線基地編」は、
年末から作業を進めてコミックス3巻にあたる分の大きな構成を組み、
年明けには2月発売号向けの脚本もでき、
普段より10日程度早いタイミングで進んでいた。
だけど入稿はギリギリ。
遊んでいたわけではない。
数日は机を離れたこともあったけど、
基本は朝の9時から夜の3時まで休日もなく仕事をしていた。
だけど、大事な部分で思ったような絵があがらない。
描いては消しを繰り返す。
自分のネームへの不信感も高まってしまう。
集中力が持続しない。
立っていられないほどの睡魔にしばしばさいなまれる。
そして時間切れだった。
なので、どうしても納得できないレベルの絵が掲載されてしまうことになった。
悔しい。
単行本では差し替えるつもり。
その中で、アシスタントさん二人にはとても助けられた。
絵の面で悶々と悩み続けてる僕の傍らで、きっちりとトーンワークや加工をしてくれ、
人様の前に出せるようしつらえてくれた。
本当に今月は頼りっぱなしだった。
二人に感謝を。
そして編集部にはお詫びを。

単行本が出て気持ちが浮ついていたのか、
意識的に自分を追い込む虐待に近い健康管理のツケがまわったのか、
作業工程に問題があるのか、
課題を洗い出して、反省をしていかないと。

単行本2巻は概ね好評で、
編集部の話では、1巻2巻ともに増刷も決定して来週には流通に乗るとのこと。
もう少し部数が伸びていく軌道に乗れば
地球に帰ってくるまで安心して描けますとも言われた。
TVアニメとの連動企画は、その放映のタイミングと連載期間が無関係ではない。
放送終了後も続けられる漫画は多くはないのだ。
ある程度の期間は描かせていただける雰囲気でのスタートだったけれど、
そういう言葉が聞けることは本当にありがたい。
出版社はもちろん「商売」なので、シビアな判断の下に動いている。
漫画家の想いや作家性とは必ずしもシンクロしない。
だけど目的としての漫画の継続性に価値を見出せれば、アプローチは違っても協力し合って進める。
それを支えてくれたのは、
ヤマトファンであり、僕の漫画の読者であるのはまぎれもない事実であって、本当に嬉しい。
春からヤマトはTV地上波放映が始まる。
それが編集部の言う軌道に乗る力を貸してくれるといいな。

「ゆきかぜ」カバーも多くの人に喜んで貰えた様子で嬉しい。(自分の手元にはないけど)
通常仕様版のヤマトの絵もとても評判がいい。
玉盛さんには日程的な迷惑をかけてしまったけれど、本当に素敵な絵だ。
自分の本だけど、そうじゃない。
皆でヤマトを作ってるんだって感慨が染みてきて僕は凄く嬉しい。
デアゴスティニの「ヤマトファイル」の企画時に
僕や玉盛さんは参画していて、その時に話し合った、
「オトナが手にとって恥ずかしくない、所有するステイタスを感じられるものにしたいね」
って発想からアプローチしたのは、やっぱり正解だったと思う。
長いヤマトファンはこの絵に十二分に満たされるものがあるはず。
キャラで漫画を選ぶ癖がついている世代は、
漫画の絵が分からない分、警戒もするだろうけれど、
それはヤマトのアニメに注がれる多くの視線や話題性っていう「うねり」が背中を押してくれる。
そうしたらきっとこの絵柄、戦艦という主張でこの本は良いと理解してくれると思う。
あの時のディアゴの企画は結局流れてしまって、
数年後に僕らの与り知らないまま突如復活、刊行になり、
僕の提出した全冊分の企画リストも、玉盛さんたちのと試案も
全部オミットされた形になってしまったけれど、僕らがあそこで重ねたものは
このコミックスで陽の目を見たと思う。

連載漫画のネームをまとめた同人誌にまつわることも、バタバタと慌しかった。
ガタケット用に別に確保しておいた分をコミックZINに廻したりとか
在庫のやりくりをあれこれしていた結果、
連載原稿の〆切と相まって、ガタケットに搬入できなかった。
家にも手持ちの在庫がない状態だったので、
ガタケットには以前に出したイラスト集などの在庫を持参してお茶を濁すことに。
わざわざネーム本のために買いにこられた人には本当に申し訳ない。
**************
ガタケットに買いにこられた方にお詫びとして別の本を差し上げましたが、
ネーム本は進呈しますので、ご連絡ください。
差し上げた本が何かで特定できますので、誌名を付記してください。
連絡先は誌面奥付のメアドか、このblogのProfile欄のメアドへ。
**************
ある程度の量を流通させたお陰で
転売屋の動きも沈静化した様子だと友人から知らされた。
どうしてコミックZIN専売で、他の「とらのあな」などでは扱わせないのという問いもあったけれど、
それは僕が「とらのあな」の姿勢を潔しとしないから。
売れ線サークルだけ集めて都内の高級ホテルでパーティやって
表彰やプレゼントを撒き、囲い込みなんてやるのはどうかと思うから。
もちろん社会では上客、顧客を招いてのそういう接待営業は普通にあることだ。
しかし同人誌の売れ筋の大概は二次創作。
そういう浮かれたことは疑問に思う。
僕はファンジンの時代の人間なので、作品を好きで描いてるし、
儲けは考えないで同人誌をやってる。それが節度だと考えているから。
コミックZINももちろん二次創作は扱うけれど、
漫画読みのマインドと感受性を大事に商売してると感じてる。
ヤマトの沈静期にも、これぞと思うヤマトの同人誌はちゃんと扱ってきてくれていたし、
「本」と読者をちゃんと見ながら、書店としての主張がある。
僕の場合は、そういう相性の方が大切だから。
同人誌を商売として考える人は好きな道を選べばいいことだと思う。
ネーム本はどうやらZINの在庫もつきそうだけれど
もう増刷はしない。
あとは親しい人に配るだけになるかな。

ヤマトの4章は楽しかった。
特に14話は自分でどうアレンジしようかわくわくしてる。
結局、いただいている26話分の脚本はまだ目を通せてないので、
モニターの設計のために部分的に絵コンテなどは見せてもらうけれど、
劇場で初見ってことが多い。
これじゃもう単なるファン状態なのだけれど、
アニメも折り返し地点を過ぎたので、こちらもちゃんと遠くを見据えた話に整えないと。
楽しくは観ているけれど、
古代が14話で「ユキ!」って呼ぶ動機付けに納得できてないので、
もう少し何か二人のやり取りを重ねてあげたいなって思ってる。
男性が女性を名前で呼ぶって、もっと気を遣うことであって欲しいので。
お互いの距離をちゃんと感じたり、
歩みよる場とかそういうものがちょっと足りないかなって印象。
森雪の心情も清純さではなく、もっと素直で人間的なベースのある感覚に表現したい。
玲ちゃんとの駆け引きだって、そういう部分があってこそ
生き生きとした想いだと思うので。

メガハウスの山本玲フィギュアの原型の写真見たけど、
また設定の趣旨を無視した露悪的な表現に偏っててガッカリ。
http://livedoor.blogimg.jp/dekopon_mark2-renew/imgs/8/7/87c0c145.jpg
こんなムチムチしたキャラじゃなくて、
スキニーな魅力を意識したキャラ造形のはずだろうに。
そういう機微がないのは表現者として貧相ではないかな。
マックスファクトリーのMAX渡辺さんの講演会を僕が企画してしまって、
その司会進行をする予定があって、
先日また原稿をおいて数時間抜けてしまったけど、話を聴くにつけ、
メガハウスの商品に垣間見えるものと、ものづくりへのマインドの違いを感じた。
作り手でいたいという気持ちから
グッドスマイルカンパニーとの関係を構築していくところとか、造形への想いとか、
商業性の要求下にありながらも
陳腐化した安っぽいフィギュアの型に毒されない
モデラーとしてのモチーフへ向かう真摯な気持ちがあった。
漫画家もそこを忘れずにいきたいなと思う。
原稿があったので、二次会に参加してゆっくりお話できなかったのが残念でならない。
氏もヤマトファンなので、またゆっくりお会いしたい。

そんなこんなで
七転八倒で漫画を描いたりの日々で
自分の至らなさに凹むことも多いけれど、
単行本2巻の感想や応援の言葉をいただけて、どれだけ救われたか。
ありがとうございます。

今月も頑張って原稿を描こう。

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