もうすぐ5月だ。
怒涛のようなGW進行の中で、今回もヘトヘトになって連載を脱稿した。
コスモゼロやファルコン、ゼードラーのフォルムに苦しみ、
冥王星の視界に広がる冷たい荒野の存在感とひたすらに格闘し続け、
時間切れのような状態で入稿になった。
そんな状況で、立派なことは言えないのだけれど、
描きながら感じたのは、僕が好きな空を飛ぶ漫画は
定規とか定型の技法とかに依らないで、
飛んでいる感じと自分の感覚に向き合いながら表現してる作品が多いなってことだった。
メカが苦手の僕だけど、
依ることで得られる演歌のような安心感に自分の落とし所を見出すではなく、
修練を重ねた向こうにあるJAZZの即興のような空に飛ばす感覚に身を置きたい。
変だとか下手糞だとか思われても
そっちの方を向いていたい。
1冊の本を手に入れた。
「サラエボ旅行案内」 http://www.amazon.co.jp/dp/4384010206/ref
ミシュラン社のガイド本を模したそれはしかし、
内戦で市街戦の最中にあったサラエボで
人たちはどう生き、どう生活を営んでいたかを
したたかなユーモアという心の力をもって記されたものだ。
世界では今も内戦にある国がある。
山本美香さんが殺害されたシリアもそうだ。
彼女が取材していた記録にはまぎれもなく戦時下の生活の営みが存在していて、
その日常感と戦闘の非日常の感覚の並立に不思議な印象を持っていたのだけれど、
人という存在と心が戦争の街の中でどうあるのか、
この本は回答の一つを示してくれそうだった。
それは今、戦争の漫画を描いている自分に何かを与えてくれそうに感じる。
土曜日は新宿ロフトプラスワンへ出かけて小林治さんが催す「ヤマト講座」を聴講。
満員御礼の盛況で、入場したら席がもうなく、
友人達のお声がけで関係者席で見ることに。
ファンイベントとして相変わらず楽しい席だった。
だけど自分的には前回の北崎拓さんと千葉秀作さんの講座がためになったかも。(講座だし)
セクシュアリティを中心にした話題だから、そこにマスクされてしまったり、
嫌悪感を先に出して理解を拒むような痩せた感覚の人もいるだろうけれど、
人間の情動に深く結びついたそこには
やはり人の本質を語るに雄弁な要素が多かった。
僕は目下、そこから思いついたものをどう今の漫画に活かすか検討中。
日曜日は仕事絡みで二つの打ち合わせ。
ひとつは編集部とのコミックス3巻の会合。
発売は6月末に決定した。早く出したいという出版社の事情が優先された結果だけれど、
僕にとっては3巻としての必要な内容が納められるかどうかが大切なので、
自分で出来ることをちゃんとするだけで異論は無い。
ただそこから逆算される日程はかなりタイトなものが組まれていて、
5月は今月と変わらない厳しい条件で執筆をすることになるのだけは明白。
それに加えて、6月発売号も表紙画を任せていただくことになり、
二重に大変。
だけどヤマトを応援するのだ、その役を担っているのだという
僕のスタンスと自覚と責務は変わらないので、
出来る協力は全力でしていく。それだけだ。
長い懸案で平行線をたどってきた件も決着がつきそうだ。
玉盛さんの提案と助言を容れて担当編集の気持ちが動き、
色々な人の意見を聴き重ねて僕の味方になってくれたのが大きい。
「一緒にヤマトに乗ったのなら、困難に立ち向かっていきましょう」
そう、玉盛さんのその言葉のとおり、僕らはあのときヤマトを観てから
長く心の火を絶やさずにきたんだ。
ろくでもないことや失敗もしてきたけど、
この火があるから自分はまだ大丈夫。
ふたつめの会合は新潟市で催される「ヤマト2199」展にまつわるもの。
http://www.manganime-niigata.jp/index.html
5月2日から7月末まで、
新潟市の施設「マンガ・アニメ情報館」ではアニメのヤマトの資料展示や
草彅琢仁さんのイラスト原画、
加藤直之さんのライブペイントといったイベントを実施、
製作委員会さんも以前の展示会などでは出してこなかった品も用意しているらしく、
地方イベントとしてだけでなく、首都圏と比較しても力の入ったものになりそう。
http://yamato2199.net/#niigata_mangaanime
で、今年の1月のガタケットに参加した折に、
新潟市役所の人が挨拶にいらして、
この情報館の近隣に併設する形で開館する「マンガの家」の方でも
ヤマトの展示を企画していて、ついては僕の描いている漫画の原画展を
というお話になり、やはり同2日より3ヶ月間、
僕の生原稿やカラー画、さらにはアニメの方でのモニターグラフィックの設定画を
公開することになった。
題して「宇宙戦艦ヤマト2199 漫画の世界」。
B4サイズ原稿で150枚分の面積があるので、それなりに見応えはありそう。
僕の絵だけでなく、玉盛さんのカバー画も
ラフスケッチからの過程を見られる掲示もあるし、
前の日記でも触れたように6月末には僕のトークイベントとサイン会もあるんだって。
展示物は一ヶ月ごとに模様替えをする予定
5月はコミックス第1巻、6月は2巻、7月は3巻という段取り。
ヤマトの公式サイトにはまだ告知がないし、
当の新潟市のサイトにも触れられてないようだけど、
まぁそこはマイナーな僕のことだから寂しい扱いは慣れっこ。
身の程は大事だ。欲を出してはいけない。
華やかな催しを遠目に、ウチの原稿は頑張って欲しいw。
サイン会とかも人はこないだろうから、
逆に身近に話せるような場にしたいな。
しかしながらこの漫画展のポスター、
オイラの名前がどこにも入ってないところがいかにもだw
さすがマイナーなオイラだ!ネームバリューゼロとは。
漫画家よりヤマトで突き抜けようっていうのが申し訳ないほどひしひし伝わるぜ!
これも身の程の証。
さぁ月内には次々号の雑誌表紙のイラストを完成させて、
すぐに連載原稿の脚本にかかっていかないと。
新潟に行って日本海でも見たいなって思っているけれど
いつのことになるのだろう。
旅がしたいなぁ。
追記:4/29 20:00
blogでポスターに名前がないこと書いたら、主催者にばれてしまって
ポスターとチラシ類が刷りなおしになってしまった。
実は校了前に僕も一応見ていたときに自分で気づかなかったので、こちらの責任でもあるし、
まぁ、存在感の薄いマイナー漫画家の証明みたいなものだと思っていたので、
余計な予算を使わせることになってしまったことには、申し訳ないことをしてしまった。
そうしたら、製作委員会も角川も見過ごした結果だそうで、
やっぱり自分は印象の無い存在だって証明を改めてしてくれて一笑い。
ということで刷りなおし版の画像。
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