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2014年2月15日 (土)

僕がオセロゲームをする理由

今週やっと連載を脱稿した。 
アシスタントさんたちの仕事にとても助けられた。 
仕上げ効果に色々提案もあって、 
仕事はジャムセッションでありたいという僕にとってはそれも凄く嬉しい。 
僕の漫画というかネームは、 
本当にどうしようもないほどまったりとした、 
凡百な構図を切り取ったりしてしまって、自分の無能無力を痛感するけれど、 
それでもなんとか頑張ったつもり。 
もっと上手くなりたい。 

さておき表題のお話。 
以前の日記で少しだけ触れたけれど、 
僕はカードやボード、ビデオゲームの類を殆ど知らないできない。 
世代的にはオーソドックスなカードやボードのものと 
ファミコンなどのビデオゲームの黎明期に接しているので、 
広い視野と体験を伴っていてもおかしくないし、 
同世代の友人には造詣の深い者も多く、仕事にしている人もいる。 
ゾルゲ市蔵さんの著作など読んでいると、 
地方でもこれほどの温度を持って向き合う体験をしている人がいたのだなと本当に驚かされる。 
だけど自分はゲームの素養が極めて少ない。 
なんでそこまで欠落しているのかはさておき、 
片手で足りるような数の遊び方を知っているゲームの一つに、オセロゲームがある。 
子供の頃に父が流行りに乗って購入してきたのだが、 
親はいい加減な人だったので、ルールをまったく知らず、覚える気もせず、 
買ったはいいが、五目並べの要領だろうと勝手に考えて使い、 
当然ながら飽きて放置してしまった。 
その哀れなゲーム盤の正しいルールを小学生の僕が知るのは数年後になる。 

数年前に携帯電話の機種変更をした際に、 
そのアプリの中にオセロゲームが入っていることに気づいた。 
(というかリバーシという名なので最初は知らないで触らなかった) 
ちょっとした時間があると、それをやってみるようにしている。 
初級・中級・上級というレベル設定があって、 
僕は中級で8割くらいは勝てる感じだ。 
上級になるともちろん辛い勝ち数なのだけど、 
面白いのは初級での勝率は5割程度。 
プログラムのせいなのだろうか、 
弱くするために、時々筋道としてありえないような 
妙なはずし方をした手を打ってくるから、 
読みや調子が狂ってそのまま負けてしまうケースが多いのだ。 
ようは非常識な手なのだ。 
その意味では中級は常識的。 
僕はそうした階層の妙を楽しんでこのオセロをしているわけではない。 
目的はまったく違うところにある。 
一つはJAZZ的な即興性の感覚を大切にすること。 
「読み」と前述したけれど、自分に課しているのは2手先は考えない。 
長考はしない。 
その場の配置から感覚を大切に一手を決める。 
そして勝てる定石やパターンが感覚的に見えてきたら、それを捨てる。 
そういうルーチン化こそ感受性の敵だから。 
JAZZの即興演奏はいい加減な音の羅列ではない。 
音楽的な理屈と筋道を実直に踏まえた上にある感覚的な自由を展開するものだ。 
オセロゲームでは相手より数を稼ぐという理念とルールがそれだ。 
それを前提として、即興性を模索していく。 
当然ながらそれは上手くいかないこともある。つまり「負け」だ。 
そしてこの「負け」がもう一つの大切なことに繋がる。 
全能感の放棄、敗者としての自分を常に自覚し続けることだ。 
人生はままならず、常に脇役である己の愚かしい主人公願望を捨て、 
感覚を信じても到らない惨めな自分を隅々まで意識し、恥じて嫌うためのツールにしている。 
ゲームの世界ですら敗者であり、逃げ場などないのだと思い知る。 
駄目人間でみすぼらしい存在だからこそ、 
人様なみに扱ってもらえるよう、努力できる。 
「妖怪人間ベム」の「早く人間になりたい!」って言葉は 
自分にはとても理解できる感覚だ。 
時々、思うようにいかない人生に憤り、自暴自棄な犯罪に走る輩がいるけれど、 
僕から見ると、どれだけ自分が可愛いんだよと思う。 
一体何処でその全能感欲求と自己顕示欲を育んできちゃったのだろう。 
自分のポジション設定がどこかで間違っているのではないか。 
最初から最低に設定してあれば、 
心血注いだ努力がそれでも僅かな結果しか得られなくても、 
自分にとっては紛れもない成果であり進歩であり、 
人生上向きに感じられる。 
失敗して3歩下がっても、それは自分が駄目人間で自分のせいで、 
また最低から積むだけのことだ。 
恥をさらしても歯を食いしばって生きるだけだ。 
ゲームはインタラクティブにバーチャルに 
自分と違う世界や道を歩ませてくれるように語られることもあるけれど、 
自分にとっては紛れもなく、負けることを何度も叩き込んでくれる、 
心の修練の場だ。
だから僕はオセロゲームをする。

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