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2022年5月17日 (火)

DJ林檎の二次元音楽館「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち 交響組曲1979」の解説をしてみよう。

5月7日にナナコFMで2年ぶりの放送となった「ラジオ・スイート ヤマトよ永遠に」。
お聴きいただきありがとうございました。
番組内でも触れましたが、再放送が決定いたしまして、
20日(金)の深夜1時から(25時とも言います)4時間放送いたします。
お聴きのがしの方、もう一度聴きたい方は、
この機会にどうぞ。

同じ5月7日に越谷FMでの林檎さんの番組「DJ林檎の二次元音楽館」で放送されました
「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち 交響組曲1979」。
自分が企画構成、音源編集をしたものであったわけですが、
放送日を合わせられたらとお願いをして、
日程を組んでいただいた林檎さんにまずは感謝を。
放送当日にアンドロー梅田さんにネット上で楽曲解説を~と資料を渡しておいたけど、
「そりゃ自分でやりましょうよ」というお返事はごもっともで、
連載漫画の原稿もようやっと脱稿したので、
遅ればせながら諸々のお話をしていこうと思うのであります。

楽曲解説に入る前に、番組を作ったいきさつを。
林檎さんのこの番組で、
福科考∞譜観さんが音源提供をされた「宇宙戦艦ヤマト 交響組曲1978」が流れたことはとても大きな衝撃でした。
それは林檎さんに近しいとはいえ自分たちのようなリスナーが、
一定のフォーマットや条件に沿った形で企画し音源を作れば、
ラジオ番組に採用してもらえることもあるのだということ。
それに続く形でアンドローさんも番組へ数々の音源提供をされるようになって、
番組のそれまでの主題歌挿入歌を扱って、年代ごとの作品や作品そのものを扱うというスタイルに
新たに、劇伴と呼ばれる劇中音楽、サウンドトラックを流すという形が加わっていきました。
自分も数あるアニメの音楽を語る番組ではなぜかアニソンに偏重していることに疑問を持っていましたので、
劇伴という世界でアニメや特撮の作品を表現し紹介できることに
大きな魅力と可能性を感じたのです。
そこで自分も林檎さんにお願いし、かつアンドローさんに教えを乞いながら、
これまでに6本の音源提供をしてきました。
 ①宇宙海賊キャプテンハーロック
 ②劇場版 地球へ…
 ③ガンヘッド
 ④ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説
 ⑤キャプテンハーロック The Endless Odyssey OUTSIDE LEGEND
 ⑥To-y
そうした中でも常に頭にあったのは譜観さんの「交響組曲1978」でした。
「新たなる旅立ち」で組曲を編んでみたいという想いが湧きおこるものの、
膨らむ構想の大きさと自分の編集技術の未熟さでなかなか着手ができないままでしたが、
一念発起して、今年の頭から少しずつ手がけ始め、完成させたのが4月半ば。
これまで二次元音楽館の音源を作る中で学んだ技術を全てつぎ込んで、
なおかつアンドローさんに助力をいただきながらようやっと形にできたのでした。
その意味ではこれまでの集大成のようなものになっていると思います。

今回の企画の構想や方針は次のようなものでした。
 ①宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ちの楽曲をクラシックの組曲の編成に再構成する。
 ②各章のテーマを設ける。
 ③原曲に忠実であることは善しとしない。破壊と再生。
 ④聴き馴染みのある音楽でありながら、まったく新しい魅力に触れられるものに。
 ⑤マニアックな曲、レア曲をひけらかすような主張はしない。
 ⑥フェードイン・アウトによる繋ぎは原則用いず、演奏のタイミングで繋いでいく。
 ⑦演奏者が演奏することを考えた楽器の連なりをもって音源編集する。
①は交響組曲を名乗るのであれば、クラシックにおける組曲の作法に沿ったものを作ろうというもの。
②も同じ意味で幾つかの章立てをして各章のテーマで構成しようという考え。
音楽的には交響組曲に厳密な定義がされているわけではない。
そこでロマン派以降の組曲にならって、楽章を立てることと、
代表的な旋律を元に抜粋と再構成をするというスタイルを採った。
③は学究的になるあまり原曲を尊重し忠実であろうとする盲信は、
表現の幅と可能性を閉塞させる。
自分がエディトリアルデザインを学んだときに、元の絵や写真を如何に殺すかが
デザイナーの仕事だと当時の師匠に教わったのを、自分は大切にしているので。
④⑤は、マニアックな音源を用いる、持っていることの主張は、
ときに聞き手にエリート志向や自己顕示欲の醜さと受け取られ兼ねない。
なので基本にポピュラーな音源を使い、聴き馴染みの印象を持たせつつ、
手作り感のある再構成の妙で、新味を出したいというもの。
音楽は開かれたものでありたい。
⑥⑦は機械的で作り手のご都合主義な勝手さを排し、
曲を演奏する人がいたなら、この楽器はどこをどう受け持ち、
繋がれる曲との無理や矛盾がないように音を扱うというもの。

以上のような考え方で、組曲1979は
序章
第二章 ヤマト
第三章 デスラー
第四章 自動惑星ゴルバ
第五章 終曲-イスカンダル
の5つの楽章で作ることに決めました。

ちなみに自分が使用しているソフトウェアは、
フリーソフトのAudacityのVer.2.3.3。
高価でハイスペックなソフトではなく、
無料で地道な機能のみがあるものを用いて手探りで作っています。
https://audacity.softonic.jp/

今回の音源の作り方。
1979年の「新たなる旅立ち」にまつわる4つの音源をそろえる。
 ① Almanac 新たなる旅立ち 音楽集
 ② Almanac 新たなる旅立ち BGM集
 ③ 新たなる旅立ち オリジナルBGM Collection 3
 ④ Eternal Edition 5 新たなる旅立ち
これらに収められた楽曲を前述の5つの楽章の沿って仕分けをする。
重複する楽曲はこの段階でオミットする。
残った曲を何度も聴きなおし、選曲をしていく。
時にはシャッフル演奏にしてトラック順にイメージしやすい曲の繋がりを断ち、
新しい印象を構築する。
時には使用しないと決めた部分を削除して音源を素材化する。
そこから生まれたアイディアをスケッチするように
繋いだり重ねたりする。
そうして曲がだんだん見えてくるという感じです。
(以後は音源元の表記に上記の①~④を用います)

■序曲 [グランドイメージ]
この曲の骨格は、2年前の「ラジオ・スイート 新たなる旅立ち」で既に出来ていました。
番組のOP曲として使おうということで、
音楽集の1曲目と10曲目を軸にしつつ他の要素を加えて自分がスケッチした音源です。
これを譜観さんが更にアレンジと編集を加えたものが番組に用いられています。
今回の序曲は、そのスケッチにもう一度立ち返って、
自分の観点で再度練り直したものになってます。
楽曲構成としては
①の1曲目「ヤマト新たなる旅立ち」に始まり、
10曲目「大戦争」の要素を少し入れて、デスラーの心象を加えて、
②の16曲目「別離(ギターとオーケストラ)」でイスカンダルの悲劇性をのぞかせる。
この導入部では、ギターの最初のピッキングのスピードを少し遅く加工して余韻を強調してある。
そこからサビまでを少し短く編集。
再び「大戦争」に戻るが新コスモタイガーのテーマで
ヤマトの救援を想起させるようにして、そのまま三つ巴の乱戦のイメージに。
今回の全五章ではテーマで分離してしまうので、
この三つ巴の表現をしているのは序曲のみになる。
続いて②-9曲目の「別離 -愛しきものよ-」の冒頭のオーボエと、
曲末の弦楽器の同じ旋律を重ね、
途中で消えるオーボエで、イスカンダルの消失を感じさせて、
最後に①-1の「新たなる旅立ち」のエンディングを繋いで物語を結ぶ。
グランドイメージとあるように、
物語全体を俯瞰させる序曲として編集しました。

□SE [ヤマト発進」
本来はNHK-FMのクラシック番組のように無音部分の後に
次の楽章へと移りたかったのだけれど、
民放局では放送事故扱いされる懸念があるので、 
楽章の間はドラマの進行と曲にリンクするヤマトのSEで繋ごうと思いました。
そこでCD、サウンドファンタジアに収められたオリジナルSEを利用して、
効果音を幾つか作成しました。
この発進音も複数の素材を重ねて自分が作ったものです。
なので、新たなる旅立ち本編で用いられた、
ドラマ要素のある展開にはなっていません。
元の音源はモノラルでしたので、擬似ステレオ感を加えてあります。

■第二章 ヤマト [新しい航海]
この曲は今回一番最後に作ったもので、
他の楽章を作ったあとの残り時間を埋め合わせる形で考えました。
理由の一つは、新たなる旅立ちでは、
ヤマトのための新曲が少なく、ヤマト2からの流用が多かったため。
そこで、④にある音源を参考にしつつ、
新曲主体ではなく、本編使用楽曲での構成であるなら、
尺として大きく割かなくてもよいと判断したからです。
楽曲構成としては
④の2曲目「メインタイトル~ヤマトに敬礼」から
④の5曲目「出航前の緊張」でヤマトの発進を表現。
この曲の金管楽器のどこかコミカルさのある表現を活かしつつ、
新コスモタイガーのバリエーションではスローテンポの
②の2曲目「若き大鷲達」を重ねて新乗組員の登場と、
一瞬の「ツンパのマーチ」③の6曲目でその騒動を思い起こさせるようにしました。
第二章にもう少し時間的余裕があれば、
この新コスモタイガーとツンパは数回のスイッチを繰り返して、
その親和性を感じさせる予定でした。
続いて②の22曲目「決断の時」を使って訓練航海の空気の暗転を。
そして②の8曲目「試練」でヤマトの精神性に触れていく。
第二章なので曲の印象としては決着ではなく、
続きを連想させる形で留めてみました。

□SE [ガミラス艦航行音]
これもサウンドファンタジアにあった短いガミラス艦の音を抽出し、
それをコピペで増やして尺を長くした上で、
右⇒左の移動感を加えたものです。
これで続く章のテーマへ橋渡しします。

■第三章 デスラー [悔恨]
この曲は(序曲を別にして)今回の最初に手がけたもので、
ここでの構成や編集の考え方が、他の楽章のプロトタイプでもあったりします。
新たなる旅立ちはデスラーの物語と言えるので、
それをどう表現するかが肝になると考え、試行錯誤をした結果がこれになります。
楽曲構成としては
デスラーのテーマと言うべき①の6曲目「デスラー三体」から
「孤独」の部分を導入部として、
大マゼラン星雲へと帰還する心中と回想を表現。
その変奏曲である③の12曲目「静かなるデスラー」の部分へ繋ぎ、深めたあとで、
④の11曲目「デスラー襲撃」を挿入。
ガミラス星を侵す不逞の者へ鉄槌を下す流れに。
ここでは曲の冒頭と末尾を繋いで、メロディは聞かせないようにしています。
出し惜しみというか、期待を外すことで聴く人をじらすようにしました。
実際、本編でこの曲が流れるとデスラーは失敗をやらかすしw
その失敗として母星を失うことを意味させる④の12曲目「ガミラス星の消滅」。
喪失感から「静かなるデスラー」に戻って漂泊を。
そして音量を絞った「襲撃」で暗黒星団との戦いの退潮を示し、
「デスラー三体」の「苦悩」で敗北感を匂わせます。
この苦悩で用いた部分は曲の末尾の余韻が短くて
つなぎの糊しろが足りなかったので、加工して増やしてあります。
そしておもむろに③の13曲目「スターシャへの想い」。
デスラーの命を賭す覚悟を示し、
「デスラー三体」の「愛」で次にバトンを渡します。

□SE [戦闘中の艦内]
サウンドファンタジアの「さらば」のSEの部分と
爆発音のSEを合成して作ったもの。
音で敗北感を漂わせます。

■第四章 自動惑星ゴルバ [脅威]
当初は他の曲と同じように暗黒星団帝国のイメージを
構成を組み替えながら表現しようと考えていました。
ところが、一連の楽曲を聞き込んでいくと、
①の8曲目「暗黒星団帝国-自動惑星ゴルバ」という楽曲の作りが、
他の楽曲の要素から成り立っていること。
逆に言えば、
このゴルバの曲を分解し変奏することで他の楽曲が生まれていることが見えてきました。
そこで、分離変奏された楽曲を用いて
原曲の「自動惑星ゴルバ」を組み立ててみてはどうかという発想にいたったのです。
またこの曲がそもそもピアノ協奏曲としての色彩が強いので、
そこを強く前に出すことにしました。
楽曲構成としては
シンセサイザーの入らない
②の14曲目「ゴルバのテーマ(ストリングス)」を用いて冒頭を構成し、
シンセのない無音部分に②の18曲目「別離(ピアノとオーケストラ)」から
ピアノソロの部分をボリュームを抑えて挿入し、
制圧されようとするイスカンダルを表現。
そこからまた「ゴルバ(ストリングス)」を続け、スローなテンポで聴かせた後に
②の9曲目「プレアデス猛攻 Type A」に。
Type Bがとかく用いられがちですが、
それを用いると元の「自動惑星ゴルバ」との差が感じにくいので、
ピアノの演奏が奔放で曲の構成も違うAを使うことにしました。
そしてAがフェードアウトする前に
③の15曲目の「ゴルバのテーマ」のピアノソロ部分にスイッチして、
弦楽器でテーマをスローに聞かせる部分に、
②の5曲目「暗黒星団帝国」の冒頭ピアノソロを重ねています。
原曲そのままにならないようにという考えです。
ただこのピアノ演奏と弦の演奏のスピードが微妙に違うので、
ピアノの演奏をソフトで遅く加工してぴったりになるようにしています。
そして原曲である①の8曲目「自動惑星ゴルバ」に移り、
弦の厚みをもってゴルバの完成形の重厚さに昇華させ、
同時にシンセの音を繋ぎに、次の曲へと流れます。

■第五章 終曲-イスカンダル [慈母]
今回2曲目に作ったもの。
新たなる旅立ちでのイスカンダルの曲たちは、
「放浪」と「別離」と「サーシャわが愛」の旋律で表現されています。
特に別離のテーマの変奏曲の多さは驚きます。
また劇中で殆ど使用されていないながらも
木村好夫氏のギター演奏曲も多い。
当時「天皇」とまで言われた木村氏を重用するあまり、
編曲でギターが前に出すぎていて、
他の楽曲との相性に違和感があったため、
ここではギター曲をカットすることにしました。
(なのでギターが聴けるのは「序曲」のみ)
楽曲構成としては
まず大テーマである「別離」のモチーフとして
①の9曲目「別離-愛しきものよ-」を編集したものを用いて提示し、
その素材のコーダの管楽器の引きから、同じ音色を持った
③の10曲目「イスカンダルの危機」後半を繋ぎ、
文字通り危機感と不安を煽ります。
その不安に重ねるように②の15曲目「守とスターシャ」の
冒頭ピアノソロのワンフレーズだけを投げかけます。
それは続く③の8曲目「放浪のイスカンダル」のオーボエ部分を
ピアノに換える意味と同時に、
「放浪」のテーマへのスイッチへ水を向ける意味があります。
そして再び③の21曲目のストリングスで「別離」に戻ります。
この曲はドラマ本編で印象的に用いられた鍵になる曲。
そして物語をなぞるように③の24曲目「サーシャわが愛」の
インストゥルメンタルに移り、
①の11曲目「愛する娘に」での島倉千代子の歌唱の一部をアカペラで挿入。
この音源はアンドローさんに作ってもらいました。
こうして改めてボーカルだけを聴くと、
演歌歌手である以前に、島倉千代子の歌唱力の高さが伝わってきます。
人の歌声の力に驚かされます。
そして歌の旋律には無関係のように
再び「サーシャわが愛」インストを重ねて、
旧い日本映画のワンシーンのような効果を出してみました。
ですがこのインスト版の曲の末尾はいささか地味で、
終曲としての力不足を感じましたので、
ここで最後の部分を「愛する娘に」の末尾の
ハープの演奏が加わったものに差し替えてあります。

□SE [ヤマト航行音]
これはPart.1のドラマ編から用いたステレオ音源。
ただ、これを聴くと途中から片チャンネルの音が無音になり
移動感がどうにも妙に聞こえて気になる。
なのでこの音源をまずはモノラル化して音のばらつきをなくし、
改めて右⇒左の移動のステレオ感を作り直し、
さらに移動中に特徴的な音色の部分を
左右のバランスをいじって重ねてあります。
こうして航行音の基本形を作り直してから、
ヤマトが帰還するイメージで、
左⇒右の移動に仕立て直しました。
イスカンダルの曲のしんみりした感じを
未来へつながる印象に持ち上げたいという考えもあってのことです。

以上が7日に放送された「DJ林檎の二次元音楽館」の
「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち 交響組曲1979」の解説です。


この番組は28分でアニメ・特撮の作品音楽をどのように聴かせるのか
という額縁であると思うから、
色んな企画や発想、構成、編集で番組が作られたらいいなと思っています。
林檎さんの普段の構成のように作品やテーマで歌曲中心に内容を作ったり、
アンドローさんの発想や手法を中核にした劇伴編集もあるように
色んな創意とアプローチで番組が作られていって楽しめたらいいな。
アンドローさんの手がけた「超人機メタルダー」の主題歌挿入歌の回などは、
野心的な試みがされていて面白かった。
そういう送り手の様々なアイディアを楽しむ要素もこの番組にはあると思います。
原稿を脱稿したしオイラもまた作りたいな。

また林檎さんへ問い合わせれば、
再放送も検討してくれるので、
越谷FMのメッセージ・フォームから
「その他の番組」で希望を送ってみるのもいいかもしれません。
https://koshigayafm.co.jp/request/
この番組はネット配信で全国で聴けますので、
土曜の夜8時30分にぜひ、アクセスしてみて下さい。

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